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10年前、ある若手社員が面談室に入ってきた。成績は悪くない。けれど目が沈んでいた。
「最近どう?」と聞くと、彼は少し笑ってこう言った。「頑張ってるんですけど、何を頑張ってるのか分からなくて」。沈黙が続いた。
私は無理に答えを出させるのをやめ、ただ問いを投げた。「それでも辞めない理由は?」
彼は数分考えて、「同期に負けたくないんです」とつぶやいた。
その瞬間、彼の“原動力”が見えた。そこから会話は急に進み、自分の得意分野を語り出した。
1年後、彼は自ら新しい部署を立ち上げた。キャリアコーチングとは、実はこの“沈黙の時間”をいかに大切に扱うかでもあります。沈黙は空白ではなく、「自分と向き合う時間」です。
「仕事は好きだけど、このままでいいのか?」——そう感じる瞬間は、誰にでも訪れます。キャリアコーチングは、そんな迷いや停滞を“自分らしい選択”に変えるための実践型の対話サービスです。答えを与えるのではなく、“自分の中にある答え”を引き出す支援。人事歴20年の私も、何百人というキャリアの岐路を見てきましたが、最も成長する人の共通点は「自分の軸を自分の言葉で語れる人」でした。この記事では、キャリアコーチングの本質と、その力がなぜ今の時代に必要なのかを紐解いていきます。
キャリアコーチングは「答えを教える」ものではない
キャリアコーチングは、就職相談や転職エージェントとは異なります。
コーチは“アドバイス”ではなく“問い”を通じて、あなた自身が考え・選び・決断するプロセスを支援します。
多くの人が勘違いしやすいのは、「コーチが良い会社を教えてくれる」「自分の適職を診断してくれる」という誤解です。
本質は逆で、キャリアコーチングは「自分の中にある声を言葉に変える」時間です。
その中で、モヤモヤの正体が見えたり、思考の癖が整理されたりします。
そして最終的には、「自分がどう生きたいか」という価値観を中心に、仕事や選択を再設計できるようになります。
キャリアの“迷い方の法則”
私はこれまで数百人の社員面談をしてきましたが、驚くほど共通しているのが「迷い方のパターン」です。
多くの人は、“やりたいことが分からない”のではなく、“やりたいことを言葉にする訓練をしていない”だけ。
人事の現場で感じたのは、優秀な人ほど「正解を探す思考」に陥りやすいということ。
キャリアコーチングの役割は、その“思考の枠”を一度外し、自分らしい感情・価値観を見つめ直す場を提供することです。
「なぜ働くのか」「どんな時に心が動くのか」を言語化できた瞬間、人は驚くほど行動的になります。
コーチングとは、成長を促す“鏡”のような存在なのです。
「思考整理」と「行動変容」をつなぐブリッジ
キャリアコーチングが他の自己啓発や転職支援と違うのは、「考える」だけで終わらない点です。
コーチングの本質は、“行動変容”にあります。
多くのクライアントが、「自分が変わった」というより「自分の視点が変わった」と言います。
視点が変われば、日々の会話・判断・選択が変わり、結果的に未来のキャリアも変わる。
例えば、「上司が嫌い」から「上司を動かすには?」に変わる。
この“問いの転換”こそ、キャリアコーチングの最大の効能です。
思考を整理することは、行動の準備運動。
準備が整えば、人は自然に前へ進みます。
どんな人に向いているのか?
キャリアコーチングが特に効果を発揮するのは、「現状にモヤモヤしている人」です。
今の仕事が嫌いなわけではない。でも、このまま続けていいのか不安。
そんな中間地点にいる人こそ、コーチングを受ける価値があります。
また、転職を迷っている人、管理職として部下育成に悩んでいる人、キャリアの“第二章”を描きたい人にも適しています。
一方で、“答えだけを早く知りたい人”には向きません。
キャリアコーチングは「共に考える時間」であり、「自分と向き合う体力」が必要です。
自分を知る勇気を持てる人ほど、その後のキャリアは驚くほど伸びていきます。
キャリアコーチングを始める前に知っておきたいこと
コーチングを受ける際に重要なのは、「相性」と「目的設定」です。
コーチも人間です。話してみて波長が合う・安心できるという感覚が、成果を左右します。
また、最初から完璧な目標を立てる必要はありません。
むしろ「何が分からないのかを整理する」ことから始めるのが自然です。
さらに、コーチングは単発よりも継続が効果的。
1回で劇的な変化を求めるのではなく、数カ月を通じて“考え方の筋トレ”を積み重ねる。
その積み重ねが、やがて「自分らしいキャリア」の軸になります。
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まとめ
キャリアコーチングとは、「自分を知り、未来を選び直すための対話」です。
情報が溢れる時代において、“正しい答え”よりも“自分の答え”を見つける力が求められています。
20年の人事経験を経て感じるのは、キャリアに正解はないということ。
ただし、“納得感のある選択”には必ず共通点があり、それは「自分の言葉で未来を語れること」です。
キャリアコーチングは、その力を育てる一番の近道です。
もし今、迷っているなら——その迷いこそ、成長のサインかもしれません。
コーチングを受けると、たまに「自分の心がうるさい」と笑う人がいます。
それは良い兆し。あなたの中で眠っていた“本音”が、ようやく声を上げ始めた証拠です。
キャリアは真面目に考えるほど難しくなるものですが、案外“笑いながら”の方がうまくいく。
カフェで話すように、少し肩の力を抜いて自分のことを話してみてください。
未来のあなたは、今日のその会話をきっと誇りに思うはずです。
  
  
  
  
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